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経験したことありますか”こむら返り”

”こむら返り”は腓腹筋(ひふくきん)という下肢のふくらはぎの筋肉が痙攣を起こし、引きつる状態をいいます。医学的には「有痛性筋痙攣」と言われ、局所的に筋肉の強い収縮で、痛みを伴い、数秒から数分間持続する病態を示します。
この”こむら返り”ですが、50歳以上の方に限っては、実に約半数の方が”夜間”のこむら返りと経験されているといわれています。また、妊婦さんにいたって40%〜60%の方が経験されているとも言われており、意外と多くの方が1度や2度は経験したことのある病態の一つと考えられています。

こむら返りの原因は?

こむら返りを起こす原因は実に様々です。ただ、病的な原因や何らかの身体的負荷が原因で発症するものは注意が必要です。ここでは、こむら返りの主な原因に関して、いくつか紹介致しましょう。
まず、健康な方でも発症してしまう場合は、運動・妊娠にともなって発症することがほとんどです。一方、病的な原因としては、電解質異常・血管病変・神経疾患・薬剤副作用・疾患関連性発症などがあります。
以下、病的な原因の代表的なものを幾つか挙げてみましょう。

[電解質異常]下痢・嘔吐・脱水・透析 などに伴い、体内の電解質バランスが乱れることにより発症します。
[血管病変]閉塞性血栓血管炎(バージャー病)・血管の一部が閉塞し血流が悪化したことにより発症します。
[神経筋疾患]脳血管障害・腰椎脊柱管狭窄症・運動ニューロン疾患・末梢神経障害など神経自体の障害や変性により発症します。
[薬剤副作用]降圧剤、胃薬(H2ブロッカー)、利尿剤、脂質異常症治療薬の一部、抗悪性腫瘍剤などの副作用で発症することもあります。
[疾患関連性]糖尿病、肝硬変、甲状腺機能低下症等血管・神経・電解質バランス調整が乱れやすい疾患で発症することもあります。

こむら返りの病態と予防法は。

実は、こむら返りの病態発症形態に関しては、まだ明確な定説はないのですが、局所的な筋肉の過剰な反応が生じていることは確かです。また、健康な方でも激しい運動の最中などにも起こることがありますが、ほとんどは一過性であり予後は良好です。しかし、突然起こる上に痛みを伴うためなるべく予防は徹底したいですね。
次に、予防法ですが、筋肉の循環を良好に保つことが第一の予防法となります。特に秋から冬場に入ると冷えが原因で下肢の血液循環も悪くなりがちになります。そのため、努めて下肢筋のマッサージやストレッチ、冷えを防ぐ対策が功を奏します。また、カルシウム・マグネシウムといったミネラル不足によってもこむら返りが起きやすいと考えられているため、食生活の中でミネラル摂取を心がけるとより効果的です。

治療法は?

こむら返りに効くお薬はいくつか存在していますが、医療機関で処方される代表的なお薬は芍薬甘草湯と呼ばれる漢方薬、ダントロレンナトリウム水和物と呼ばれる筋弛緩薬、ジアゼパムと呼ばれる抗不安薬が使われることが一般的です。

「芍薬甘草湯」は急激に起こるこむら返りを代表とする筋肉の痙攣に対して、非常に効果的であり、古くから処方されています。漢方と聞くと効果が出ることが遅いのでは、と思われるかもしれませんが、漢方の中でも特に即効性があるお薬として有名ですので、症状の早期軽快には非常に高い効果を発揮します。

「ダントロレンナトリウム水和物」は筋肉の収縮を緩める筋弛緩薬と呼ばれる種類のお薬のため、全身の過剰な筋肉収縮・痙攣に効果的と言われています。

「ジアゼパム」は、特に脳脊髄疾患に対する筋痙攣や痛みに効果が高いと言われています。

以上に挙げた薬剤の他に、原因となる疾患・病態により、痛風薬や下剤、糖尿病治療薬やビタミン剤、肝疾患治療薬や抗血小板薬などが効果的な場合があります。このように、こむら返りに直接むすびつくような原因が明らかな場合は、原因疾患治療と併せて治療することが大切です。

こむら返りを起こす病態・状態は数多く存在します。症状が長期にわたり続く場合や頻度が増える場合は、一度医療機関での詳しい検査を行っていただくことをオススメ致します。意外と思いもよらない原因が隠れているかもしれません。そして、何よりしっかりと日常生活の中で行える予防法を実践し、健康な身体を維持しましょう。