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桂歌丸さんが「腸閉塞」であると判明しました

今月14日に入院した桂歌丸さんの病名が「腸閉塞」であるということが先日判明いたしました。
なんと歌丸さんの現体重は36kgで、現在は口からの栄養が摂れない状況のため、医療用のチューブを使い、鼻から液体の栄養剤注入(経管栄養)を行っているようです。
退院の目処はまだ立っていないようですが、一刻も早い回復をお祈りいたします。

「腸閉塞」とは?

さあ腸閉塞とはなんでしょうか? 
通常は食事をすると内容物は、口から食道、そして胃・十二指腸・小腸・大腸をめぐり、最終的に肛門から便となって排出されるのですが、これらの内容物が小腸や大腸に詰まってしまうことがあります。これがいわゆる「腸閉塞」と呼ばれる状態で、「イレウス」とも呼ばれます。腸閉塞が発生すると、肛門までたどり着くべき内容物が腸管で詰まっているがために、腸閉塞を起こした場所より口側に近い内容物が肛門側に向かって進めないため、内容物が逆流してしまう現象を生じます。その結果吐き気や嘔吐、腹痛といった症状が現れるのです。一言で「イレウス」と言っても医学的には原因や発症形態により幾つかに分類され、治療法も原因により異なります。そのため、医学的には診断をしっかり確実に行うことが常に求められています。

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原因は?

腸閉塞の原因は様々ありますが、開腹手術後に生じる場合の他、大腸がん、ヘルニア、胆嚢炎、胃潰瘍などが原因で腸が詰まることもあります。以下、日本国内で大規模に行った調査結果ですが、手術後に生じたものや、腫瘍の発生に付随して発症したものが多いことがわかります。お腹の手術を経験された方もいらっしゃると思いますが、術後のイレウス発症を防ぐため、早期のリハビリ開始や日常生活の中での過ごし方などが重要となります。

2000年「イレウス全国集計21,899例の概要」より抜粋

1) イレウスの約60%は癒着性【腫瘍が関与するイレウス(15.3%)、麻痺性イレス(6.1%)、絞扼性イレウス(5.5%)、外ヘルニア嵌頓(3.1%)、腸重積(1.2%)、腸軸捻転(1.2%)と続く】

2) 癒着性イレウスのうち手術の既往を有さなかったものは全体の1.3%に過ぎず、75%で上部または下部消化管手術の既往がある。

【参考文献】恩田昌彦、高崎秀明、古川清憲ほか、イレウス全国集計21,899例の概要 日本腹部救急医学会雑誌 20巻5号 Page: 629-636 , 2000.

治療法は?

腸閉塞の治療の大原則は、まず絶飲食を行っていただくことが多くあります。これは、胃腸を休めることがなによりイレウスの悪化を防ぐ為に必要になるからです。また、水分摂取が出来ない為、点滴などで必要な水分を身体に補う必要もあります。ただ、先ほど挙げさせていただいた通り、原因によっては手術を必要とする場合もあります。

絶飲食の状態で治療を開始しても、病状が進行している場合は鼻から胃・腸まで管を入れ(イレウス管)、胃腸に溜まってしまった内容物を体の外に汲み上げる必要があります。イレウスが続いている場合、胃液などのたまりが排液されるので、500~1000ml/日前後排液がある場合もあります。しかし、腸閉塞が解除された場合、排液量も減少しお腹の張りが少なくなる、排ガスが認められるなどの変化が見られます。

イレウス管の使用で改善しない場合、絞扼性(こうやくせい)イレウスと呼ばれる腸閉塞が発症しているかもしれません。この場合、捻じれて血流障害を起こしてしまっているものや、1週間以上症状が緩和しない場合、最悪の場合は手術治療となります。
腸閉塞には完全な予防法などが無い為、暴飲暴食は極力避けることと、過去に開腹手術をしたことがある場合は、腸閉塞になりやすいということを認識しておきましょう。

生活の面でイレウスを予防するには?

お腹の手術を受けていなくても、また腫瘍などの病気が無くても何らかの原因で腸閉塞は起きてしまいます。しかし、ちょっとした心掛けで腸閉塞の発症は予防できます。慢性的な便秘や、何らかの腸管の循環不全、腸管への負担の増加は、腸閉塞を生じる原因としても大切なものです。
日常生活の中で心がけていただくこととしては、便秘の改善・予防、消化不良予防や消化促進につながる生活が最も大切です。

食べ過ぎや早食いは腸の働きを悪化させますし、アルコールの多飲・脂っぽい食事の過剰摂取や水分不足は大敵です。この他、お野菜を中心とした食生活改善も予防には効果的です。しかし、一度でもイレウスを発症した方やお腹の術後の状態である方の場合、不溶性食物繊維が豊富なゴボウ、セロリ、ゼンマイ、たけのこ、フキなどの過剰摂取は、腸に負担がかかるので避けるようにしましょう。

以下、消化されやすい食物のリストがありますので、メニューを考える際のご参考にしていただければと思います。

【腸閉塞を予防する”消化されやすい”食品】

肉類…牛肉、豚肉、皮なし鶏肉、鶏ささみ
魚類…白身魚
卵…鶏卵、うずらの卵
豆類…豆腐、高野豆腐、こしあん、ひき割り納豆など
乳製品…牛乳、ヨーグルト、チーズ、スキムミルクなど
穀類…軟飯、お粥、食パン、うどん、マカロニ、スパゲティなど
芋類…じゃがいも、サトイモ、長芋など
果物…りんご、もも、バナナ、缶詰類、コンポートなど