遠隔診療は限界集落などの医療空白圏にも平等に医療を提供できる切り札となりました。一部地域では遠隔診療を導入し、慢性疾患の経過観察などに功を奏しています。では、遠隔医療を行うにあたり、医療報酬につながる「保険点数の算出」はどのようにしたら良いのでしょうか。そもそも遠隔診療による診察は、保険診療に含めても良いものなのでしょうか。調べてみました。

 

目次

自由診療と保険診療とは

診療は病院で診察・治療を受けることを指しています。その中でも「自由診療」「保険診療」に分けられていることはご存知でしょうか。

◇保険診療とは
私たちは自治体や勤務先から「健康保険証」をもらいうけています。これは、カードやB6サイズの紙である場合がほとんどです。病院で診療受ける場合にはこの健康保険証を提示し、医療報酬の2割にあたる金額を負担します。残りの8割は加入する健康保険組合や国民健康保険、共済組合から支払われます。

一般的には「保険医(ほけんい)」や「保険薬剤師(ほけんやくざいし)」が在籍する医療機関で施される診療を「保険診療」といいます。急性疾患や慢性疾患の一般的な診療に関しては保険が適用されると覚えておくとわかりやすいでしょう。

健康保険法などで疾患治療のための定型の治療が決められていることと、その治療は公定価格が決まっているので、保険医の下では平等に診療が受けられるメリットがあります。

◇自由診療とは
自由診療とは、健康保険が適用されない診療を指しています。疾患治療を目的としない投薬や医療行為の他、国内で承認されていない治療法や医薬品を使った疾患治療の場合は、自由診療となり診療報酬の100%を自費で負担することとなります。また、医療報酬も医師の裁量で決定されます。

例としては、美容外科での整形治療や審美目的での歯列矯正、先進医療や未承認薬を用いてのがん治療などが挙げられます。視力矯正のレーシック手術 なども健康保険対象外の治療として知られています。ただし、保険医のもとで行われる診療でも、治療法の選択によって全て自費診療となる場合があります。

保険診療と比べると自由診療は診療に幅が生まれるため、自由度が高いものとなりますが、医師法や医療法という法のもとで施される医療行為であることには変わりありません。

 

遠隔診療に保険診療は適用されるのか

さて、遠隔診療ですが、結論からいえば保険診療を適用することができます。

保険診療は、医師法によって「診察・診断・薬の処方を医師が行わなければいけない」と定められているため、単純にテレビ電話などを介して問診を行うだけでは診療とはいえない可能性があると受けとめることもできます。ただし、バイタルや画像、検査の数値に関する情報をリアルタイムで把握できる環境が整っていれば、丁寧な問診が可能となります。一方、対面診療ではなく遠隔診療が常となれば、見逃される疾患も出てくることでしょう。こうしたことから、保険診療の中でも急性期における診療は行わず、経過観察を必要とする生活習慣病等に代表される慢性疾患などの再診にとどめる医療機関も見られます。また、自由診療で診察を行う症状、例えばAGA(男性型脱毛症) など薬を処方しながら経過を見る治療などに遠隔診療を用いることもあります。

この後で触れる「診療報酬の算定」にも関わるため、まだまだ積極的に遠隔診療を取り入れられない現状が浮き彫りとなっています。

 

遠隔診療時の保険点数 はどのように計算されるのか

遠隔診療の保険点数を算定する際には、「電話等再診」という項目で点数を算定するしか他ありません。初診で遠隔診療を受ける場合や、「電話等再診」の点数加算ができない200床以上の病院では遠隔診療に対する算定はできません。こういったことから、遠隔診療を積極的に取り入れる医療機関がごくわずかという理由がおわかりになることでしょう。

遠隔診療時の保険点数ですが、「電話等再診」 という項目に照らし合わせると、再診と同じ72点を加算することができます。ただしこの場合、外来管理加算や地域包括診療加算の算定はできないものとされています。このことを見ても「遠隔診療」の現状に見合っていないこと気付く方もいらっしゃることでしょう。

電話での診断とオンライン回線を用いた遠隔診療は実態としては異なるという認識がなされていますので、基本的な考え方に基づく一定のルールを設けた上で「電話等再診」と「遠隔診断」を区別した報酬を制定することが議論されています。この議論でさまざまなガイドラインが設けられると、遠隔診療に対する保険診療への点数明確化がなされることでしょう。

 

遠隔診療は保険診療ができる医療行為であることがわかりました。しかし、現状で決められた医療報酬の算定方法とはそぐわないために、医師が敬遠していることも浮き彫りとなっています。現在は、遠隔診療がもっと身近なものとなり、医師や医療機関としても導入しやすいものとなるようガイドラインの制定が議論されています。一日も早い、基本の考え方に基づくルールづくりが待たれます。