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がんと診断されたら、まず、治療方針。

 ある日、がんと診断されたら、治療方針を考えていきます。
がんは、そのまま放っておけば、身体を蝕(むしば)んでいくものですから、生きるためには、必ず治療をしなければなりません。そして、出来る限り早く、治療をした方がいいのは周知の事実です。
 がんの治療方針は、がんの種類、がんのステージ(進行度)などによって、患者さんと主治医が話し合って、決めていきます。そして、がんの治療方針が決まると、仕事を休む期間がある程度、推測できます。

全身への負荷が少ない治療なら、年休等で対応して数日から数週間で復職可能。
全身への負荷が大きい治療なら…

 がんの治療方針が決まったら、初めて仕事を休める期間が予想できます。
それは、下の図にありますように、AパターンとBパターンがあります。
 Aパターンは、内視鏡による治療や、部分的な外科手術など、全身への負荷が少ない治療で終了する場合です。Aパターンの場合は、年次有給休暇等を利用することにより、数日から数週間の休務の後、復職できる可能性が極めて高いと思われます。
 しかしながら、Bパターン、つまり、開腹手術や、抗がん剤投与など、全身への負荷が大きい治療が必要となるケースが多いのではないかと思います。
 Bパターンの場合は、年休の範囲内だけでは復職は難しく、病休等の対応がどうしても必要になってきます。特に、中小零細企業のがん患者さんは、このような場合、退職を選ぶ人も少なくないと思います。ある統計では、退職率は3割との報告がありますが、遠藤の実感としては、中小企業であれば、退職率は4割以上だと思います(今後、中小企業のがん患者さんの復職実態調査も実施予定です)。

なぜ、退職を選ぶがん患者さんが少なくないのか?
それは、日本の多くの中小企業には、がん患者さんの復職支援体制がないからです。

 なぜ、退職を選ぶがん患者さんが少なくないのか?
その理由は、復職できる確率、病休日数のおよそのデータがないために、
会社がどうしたらよいのか分からない、前例がない、人件費に余裕がないなどを理由に、
多くの企業には、がん患者さんの復職支援体制がないからです。
 もちろん、前回の健康コラムにあったように、「復職するための3要素」のうちの、気力・体力の回復が不十分も大きな原因ですが、やはり、社会としては、「職場の復職支援の充実」が何より大切なことでしょう。

がんの新規病休発生率は、1.5人/1000人・年。
つまり、666人の会社であれば、毎年1人、
66人の会社であれば、10年に1人の割合で、社員ががんで仕事を休む計算です。

 そもそも、今回の大企業病休・復職データによると、がんの新規病休発生率は、1.5人/1000人・年です。つまり、1000人の会社組織があった場合、一年間にがんと診断されて休む社員は、およそ1.5人ということです。666人の会社であれば、毎年1人、66人の会社であれば、10年に1人の割合で、社員ががんで仕事を休むことになるということです。
 会社が小さくなればなるほど、「会社の同僚ががんになった」と話を聞くことはかなり少ないでしょう。そのため、小さな会社ほど、「前例がなく、どうしていいのか分からない」「がん患者さんを抱える人件費に余裕がない」「復職するまでどれくらい時間がかかるのかなどの経験が少ない」ことでしょう。

がん患者さんの復職支援体制が整っている会社は、殆どないのが現状。
より多くのがん患者さんが復職しやすい社会にするために。

 復職支援体制がない会社は、依然として、あまりにも多いのが現状で、がん患者さんの復職の実態は依然厳しいと思われます。
 しかしながら、今回の「がん患者の病休・復職に関する大規模実態調査(2015年5月22日毎日新聞に掲載)」により明らかとなった、大企業35社のがん患者さん1278名の復職率、病休日数などのデータを参考に、「中小企業でも、がん患者さんの復職支援体制を少しずつ作っていこう」という社会に、皆で進めていくべきだと思います。
 なぜなら、男性の2人に1人、女性の3人に1人が、がんと診断される時代なのですから。

 それでは次回、復職実態調査のうち、「がんの種類ごとの復職率」、「およその病休日数」のデータをお見せしたいと思います。(スペースの都合上、次回に致します。すいません。。。)