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帯状疱疹と脳梗塞との関係は?
帯状疱疹は、水疱瘡の原因でもある水痘ウイルス( VZV)感染の再活性化により生じる病気です。
一方、脳梗塞は、生活習慣病に大きく関係しており、血管の加齢性変化や炎症で発症することがほとんどです。この帯状疱疹と脳梗塞は、発症形態や症状についても全く関連性がないと思われていたのですが、海外の研究グループが帯状疱疹発症後に脳梗塞が発症しやすくなるから注意が必要との興味深い発表をしました。
脳梗塞の発症にウイルスの影響が関係
2009年のLancet Neurology誌の総説記事ですが、帯状疱疹の感染後に、身体の中では様々な”血管炎”
が生じることが示されています。そしてこの血管炎こそが、脳に発生してしまうと脳梗塞を発症してしまうという衝撃的な内容でした。血管炎自体の原因は幾つか想定されていたのですが、その原因の1つは免疫の活性化状態が変化し、全身の血管の炎症を誘発するのではないかとの結論と、もう1つはウイルスが、実際に脳の血管で増殖して炎症を起こす、というものです。
帯状疱疹は全身に起こる病気ですが、顔面の三叉神経、特に眼神経と呼ばれるその第一枝に起こると、角膜炎や頭痛などの症状を引き起こすだけでなく、脳に近いためにウイルスによる炎症も起こり易く、脳梗塞の事例も多いと考えられています。
脳梗塞予防にもワクチンが有効かも
2009年と2010年に台湾における疫学研究が発表され、帯状疱疹後1年以内の脳梗塞の発症リスクは1.3倍に、眼神経の帯状疱疹に限ると4倍〜5倍にものぼるとの結果が出ました。そのように考えると、脳梗塞の発症予防の1つに帯状疱疹の感染予防がとても重要なことがわかります。とりわけ脳卒中自体のリスクが高まる中高年層では、抗ウイルス剤の適切な使用と共に、そもそも発症を予防する手段として、事前のワクチン接種による感染予防が重要だと考えられます。
帯状疱疹予防の水痘ワクチンとは
帯状疱疹の感染予防には、”水痘・帯状疱疹ワクチン”が用いられます。このワクチンは、毒素の弱まった水痘・帯状疱疹ウイルスを凍結させた後、乾燥させたもので造られた生ワクチンです。これまでは、感染により症状が重症化しやすい人にまず使用されてきたのですが、今では広く一般に用いられ、副作用もほとんど認められないことから小児の水疱瘡に接種されることが多くなりました。ワクチン接種で抗体陽性率は90%以上ともいわれ、帯状疱疹の発症率は65%にまで引き下げられるといわれているので、予防接種はとても重要であることが分かります。また、幼児期に水疱瘡に罹患しても、その頃に作られた抗体は約20年後には弱くなりますので、脳梗塞が発症しやすいと考えられる壮年〜高齢者に限らず、若い世代から接種することも健康維持と感染予防の為にはとても良いと考えられます。
帯状疱疹に感染後、注意すべき症状
以上に述べたように、これまで健康で基礎疾患もなく過ごしていても、帯状疱疹を発症した後に脳卒中が起きる危険性はあります。そして、脳梗塞をはじめとする脳卒中は、ある日突然起こります。このことを念頭に、ここ数ケ月以内に帯状疱疹を患った方で以下に記す症状や兆候があるようでしたら、すぐ医療機関を受診することをお勧めします。次に示すのは、脳卒中の危険なサイン「FAST(ファスト)」です。是非とも頭に置いて、心当たりがあれば医療機関を受診しましょう。
Fは、「face」 顔の左右の半分が動かなくなって、口元が下がってくる
Aは、「arm」 体の片方の手足が動かない、力が入らない
Sは、「speech」 話そうとしても呂律(ろれつ)が回らない、言葉がでない
Tは、「time」 時間