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妊婦さん!生肉は特に気をつけましょう。

本格的な暑さが続く毎日ですが、皆さん夏バテは大丈夫でしょうか。気温の上昇とともに食中毒の発生に気を遣わないといけないことが増えるのですが、今回は”妊婦さん”に特に注意してほしい”生肉”に関してお話致します。
妊婦さんが生肉を食した場合、単なる感染性胃腸炎の他に、実は”トキソプラズマ”という寄生虫による感染症が特に注意が必要となります。この「トキソプラズマ感染症」の存在は一般にはあまり知られていないのですが、万が一、妊娠中の母体に感染した場合、胎児にも感染し、目や脳に障害を起こしてしまう可能性があるのです。妊婦さんが特に注意すべき感染は「TORCH症候群*」と呼ばれますが、その代表的感染の一つが「トキソプラズマ」なのです。  

*Toxoplasmosis(トキソプラズマ症)Other(B型肝炎ウイルス、コクサッキーウイルス、EBウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス,梅毒など)Rubella(風疹)Cytomegalovirus(サイトメガロウイルス)Herpes simplex virus(単純ヘルペスウイルス)の頭文字を取ったもの。

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そもそもトキソプラズマとは?

トキソプラズマ牛・猫・豚・馬などに寄生し、人に感染するのはそれらの生肉を食した場合や土いじりなどの経路で感染します。感染を起こしたネコの糞を触ることでも感染する危険性があるため、ペットとして猫を飼われている方の場合は糞便処理には注意が必要です。

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ただの胃腸炎との違いは?

トキソプラズマは実は“寄生虫”です。そのため、一般的な抗生物質(細菌が対象)では寄生虫を退治することができません。そのため、ただの胃腸炎と思って放置することは、非常に危険なことなのです。感染が起こると頭痛・発熱・全身けん怠感やリンパ節の腫脹、この他胃腸炎に似た消化器症状を呈することが特徴ですが、トキソプラズマ感染に特有の症状というものが無いことが特徴として挙げられます。

トキソプラズマ感染が疑われた場合の検査はどのようなものがあるのでしょうか。

私たちの身体では、日々細菌やウイルスといった外敵の脅威に曝されています。そして、これらの外敵を排除するために、体内では特定の排除部隊として「抗体」というもが作られます。この「抗体」が体内に存在していれば、感染源「抗原」を排除することができるため、感染による症状出現や状況の悪化を防ぐことができるのです。同様にトキソプラズマに曝された時にも「トキソプラズマ抗体」というものが作られますが、初めての感染の場合では抗体の効力が十分発揮できません。つまり、妊娠前にトキソプラズマに感染し、抗体が「陽性」になっていたのなら、胎児に感染する心配はありません。しかし、妊娠後、最初の検査で「陽性」と出ても、それが妊娠前の感染なのか、妊娠してからの初感染なのか感染時期まではわからない場合があります。そのため、抗体検査の他にもさらに詳しい検査を行う必要が出てきます。

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Q . 陽性と出たとき、感染時期が「妊娠前」か「妊娠後」か、どうやって調べるのですか?

A. トキソプラズマ特有のIgM抗体とIgG抗体の値を調べます。IgM抗体が陰性なら妊娠前の感染なので、ここで終了です。心配しなくてよくなります。ここでも「陽性」だと妊娠後の感染も考えられます。ところが、なかには妊娠前に感染したのに、長い間、IgMの値が高いままの人がいるのです。そこで必要に応じて、IgGアビディティという検査を行います。この検査を行えば、最近の感染かどうかがはっきりわかります。IgMが陽性だとしても、IgGアビディティを調べると、74%の人は過去の感染だったというデータがあります。IgGアビディティの検査は、どこの医療機関でも受けられる検査ではないので、専門病院を紹介してもらうといいでしょう。

トキソプラズマ感染を予防するために重要なこと

母子感染症の中でも、普段の生活・食生活を介して感染してしまう感染など気にもしなかったという方も多いかと思いますが、国内の妊婦さんの約90%がトキソプラズマ抗体を持っていないとされているため、感染予防は非常に重要となります。

妊婦さんは感染に注意  http://shirumirumamoru.info/prenatal/video02.html

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安心した毎日を送るために

今回、妊婦さんが特に注意すべき感染の一つ、トキソプラズマ感染症についてお話し致しました。基本的な注意点を守ることだけで感染は防ぐことが可能ですので、楽しい食生活と安心できる日常生活を送るようにしたいですね。