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「がん保険」は重要かも。。。

 遠藤(筆者)らの大企業35社の病休実態調査の結果(2015年5月22日毎日新聞に一部掲載「がん休職:6割が職場復帰 東京女子医大助教調査」)では、仕事を続けられなくなった(就労困難となった)疾患の第一位は、メンタルヘルス不調(うつ病、適応障害、統合失調症など)。第二位は、がん(1278名)、第三位は脳卒中(382名)、第四位は心筋梗塞(142名)という結果となりました。
家族や友人、会社の同僚や上司、芸能人など、仕事を休まざるを得なくなったことを耳にすることが多いと思いますが、仕事を休まざるを得ない理由とその割合は、これくらいであることがこのデータから示唆されます。

 三大疾病(がん、脳卒中、心筋梗塞)だけで考慮すると、仕事を休まなければならない原因の約7割は、がんです。

脳卒中、心筋梗塞で会社を休まなければならない人の数は、がんに比べてかなり少ないことが分かりました。脳卒中や心筋梗塞の場合、「ヘビースモーカーである」「大酒呑み」「血圧がかなり高いのに放置していた」など、ある程度、思い当たる節のある方が多いのではないでしょうか。脳卒中や心筋梗塞の場合は、それらの病気になる前に、健康診断の結果などを参考に、予防できる余地が多々あるように思われます。

 ただ、がんの場合は、「今まで病院に通院などするような病気にかかったことがない」人にも十分に起こり得ると思います。もちろん、がん予防の為に、禁煙などの生活習慣の改善などによって、がん予防でもできることはありますが、完全にがんを予防することが難しいのが実状ではないでしょうか。

 医療保険についてはどうでしょうか。医療保険等の加入の際に考慮すべきこととして、将来、60歳ぐらいまでに、就労が困難になる確率が最も高いのはがんであることが分かりますので(メンタルへルスに自信がある人にとっては。。。)、「がん保険」は将来設計を考える上で、重要かもしれません。

「うつ保険」があればいいのに。。。

 それにしても、「がん保険」はあっても、「うつ保険」はなぜ存在しないのでしょうか。働けなくなる原因の第一位はメンタルヘルス不調です。
メンタルヘルス不調で仕事を辞めたり、会社を休む人が圧倒的に多い現実がそこにはあるのですから、「うつ保険」なるものがあれば、安心して働いていけるのになあ。。。とは思います。「メンタルヘルス不調で就労困難であること」について、保険会社に医学的な根拠を示すことは、実は難しいのかもしれません。
 それに、「うつ保険」を悪用する人も出てくるかもしれませんね。

 何はともあれ、65歳、70歳、いや、生涯現役で働いていくためには、メンタルへルス維持とがん予防が最も大切だということは間違いないでしょう。

 では、働く世代のがんについて、少しばかり書きたいと思います。

(参照:市民のためのがん治療の会 シリーズ がん医療の今 「より多くのがん患者さんが職場復帰できる社会を目指して」http://www.com-info.org/ima/ima_20150714_endou.html

20代~40代は女性の方が、50代以降は男性の方ががんになりやすい。

 意外なのは、働き盛りである20代、30代、40代の場合、女性の方が、男性より圧倒的にがんにかかりやすく、特に、乳がん、子宮頸がんには注意が必要だということです。20代から40代の女性の方は、がん予防に努め、特にがん検診などで早期発見・早期治療に心掛けることがとても大切です。

男性の場合は、精巣がんなど30代に罹りやすいがんがありますが、男性ががんに対して注意が特に必要になる年齢は、50歳を超えてからです。男性は50歳を超えたあたりから、胃がん、肺がん、大腸がんをはじめ、多くのがんに罹りやすくなります。

もし、がん保険を検討する際は、20代~40代は女性の方が、50代以降は男性の方が、がんになりやすいことを念頭に検討されてもよいかもしれません。

がんの予防・早期発見・早期治療で、仕事を休まず、続けていけたら。

 内視鏡で取れるがんなどであれば、年次有給休暇の範囲内で休んで復職できるかもしれませんが、手術や抗がん剤、放射線治療が必要ながんの場合は、会社を辞めざるを得なくなったり、会社を休んで治療することが多いと思われます。 

もし、将来がんにかかっても、年次有給休暇の範囲内で休んで復職できるくらいに、まずは禁煙などの生活習慣の改善に心掛けて、がんの早期発見・早期治療のため、がん検診を積極的に受けた方がよいでしょう。特に運動することで、体力レベルを高めると、がん死亡が少なくなることが知られています。