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面識のない他人に骨髄を提供するとはどのような事なのか。実体験に基づいてレポート致します。

2014年の秋、一通の書類が自宅に届きました。

「ドナーに選ばれた」

適合通知は人によっては登録から2週間〜10年ほどばらつきがありますが、骨髄バンクに登録したのはこの二ヶ月まえだったので想像していたより早く候補者に選ばれました。

書類が届いた翌日に同意の返事を送り、3ヶ月後に骨髄提供が行われました。検査の都合上仕方のないことですが、思ったより通知からドナー提供まで時間が掛かったのをもどかしく感じたのを憶えています。

ちなみにドナー適合通知は一度に複数のドナーに送られます。ドナー登録した全ての方がドナーになるわけではなく(*ドナー登録してもドナーになる義務はない)、患者の体質と会うドナーが優先されます。

最初の書類を送ってからすぐに最寄りの病院にて検査と面談の予定が組まれました。ドナー提供に対して謝礼は一切ありませんが交通費は出ます。検査結果は良好、骨髄提供(採取)に同意する前の最終面談時には成人でも両親の了解をとる必要がありました。

提供先の患者さんとは一切会えず、術後の手紙のやり取りも個人情報を含まない2通までと制限がかかります。これは患者とドナーの間で金銭的やりとりを生じさせないためで両者の公平さを保つ骨髄バンクのポリシーです。

都内の病院にて採取されるのが決定し、担当医はご本人も20代の頃に骨髄提供をされた方で安心して採取を任せることができました。

採取するまえにもう一度入院先の病院で入念な検査があり、入院や手術についての詳細な説明を受けました。

入院を始めた最初の夜から絶食して手術に備えます。手術前の患者として一番緊張したのはパンツ無しで手術室まで運ばれた時でした。

麻酔後のとぼけた顔は見せない

術後、麻酔から覚めて

麻酔から覚めた時は酸素マスクと足には加圧器を装着が着用され(エコノミー症候群対策)、手首には点滴が繋がれていました。麻酔から覚めたときは寝ぼけており、麻酔医の先生に「悪夢を見た」と文句を言ったのを憶えています。このあとまた一眠りしてマスクを外してもらえました。

腰は初日と翌日に痛み止めをもらいましたが、そのあとは患部(腰)を押さないかぎり痛みはありませんでした。点滴は痛み止めが終わるまで付けっぱなしで、2日間で外せました。

念のため骨髄採取を簡単に説明すると、腰の骨(腸骨)から骨の髄を注射で抜き取る事です。世間的には痛いイメージがありますが手術は全身麻酔によって行われるので寝てる間に終わりました。昔はかなり肉体的苦痛があったようですが、いまの手術もかなり洗練されており術後の痛みは重い筋肉痛程度でした。

入院しているときに親戚や友人が一人もお見舞いに来ないのはショックでしたが、自分で選んで健康体のまま入院したので誰にも同情されませんでいた。ちなみに担当医によると骨髄液が溢れるほどあり採取は楽だったそうです。

そして3日目に無事退院。バンクと担当医から丁寧な説明と訪問があったので不安はひとつもなく退院できました。退院後は骨髄バンクから電話でのフォローアップ、1ヶ月で患部の痛みが完全に消え、3ヶ月後にバンクからアンケートのお願いと厚生労働大臣からの感謝状をいただきました。

余談ですが、白血病患者は放射線治療と移植によりドナーと同じ血液型になります。骨髄移植を受ける時に患者の骨髄をすべて破壊され、ドナーの骨髄から新しい血液を作られます。よって患者の血液は移植後にドナーと同じ血液型とDNAとなります。ドナーと患者は文字通り血の繫がりができます。

しかし患者の病態はドナーには報告されない規定があるので、患者の容体はドナーに一切知らされません。

骨髄提供を経験して

機会があればまたドナー提供を行いたいと思います。ドナーになるデメリットとして時間的制約が考えられますが、周囲の理解を得るのは難しくありませんでした。ドナーになるメリットは感謝状をもらえる以外全くありませんが、患者に骨髄を提供する行為に理由は特に必要がない気がしました。

以上が私の骨髄提供をした経験と感想です。

病室からの景色