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季節性疾患の原因、遺伝子の影響?

季節の変わり目は、体調を崩しやすかったり、元気がでないな・・という方も多いのでは。季節の変わり目は、気温や湿度・気圧の変化などで身体に負担をかけやすいのは事実です。しかし、それ以上に実は皆さんの身体の中で遺伝子レベルの変化が起きていることをご存知でしょうか。
遺伝子が変化というよりも、遺伝子のスイッチのON・OFFを調整していると表現すれば良いかもしれません。医学的には、「遺伝子の発現」という表現をよく使いますが、この「発現」こそが大きな意味をもつのです。

遺伝子発現の変化がより明確に解明

先日、世界でも権威のある学術雑誌のNature(ネイチャー)誌に公開された論文によると、ヒトの遺伝子発現が”季節によって変わる”ことが明らかとなったのです。
「遺伝子発現」とは、遺伝子の”ON/OFF”と表現しましたが、詳しく述べると遺伝情報が細胞の構造や機能に変換され、具体的に”特徴”として表れることを意味します。
これまで「遺伝子発現」は時間による影響を受け24時間周期で変化(増減)することは分かっていたのですが、季節の変化を受けるかどうかははっきりしていませんでした。ところが、時間と同じように季節でも遺伝子発現が大きく変化するということが明らかになったのです。

”約4分の1”の遺伝子発現が季節に影響を受けているとは!

今回、研究チームはヒト遺伝的データから、遺伝子発現量に有意な季節差のある遺伝子は、全体の約4分の1(23%)も存在していることを確認しました。また、発現の季節変動は北半球と南半球で逆転しており、高緯度や赤道付近の季節変動は小さかったとも述べています。
遺伝子発現と体調・疾患との関係は、例えば免疫(抵抗力)の強弱に関係しています。冬などに風邪が流行りだしますが、その際に免疫に関係する遺伝子発現がより高まると、本来もっている抵抗力が発揮されやすくなります。逆に免疫に関係する遺伝子発現が弱いと抵抗力に影響が出やすい可能性が出てきます。ヨーロッパに住んでいるヒトの場合、冬に”炎症”を起こしやすくなる傾向があり、心血管疾患や自己免疫疾患に関連するタンパク質の血中濃度が上昇したそうです。

www.nature.com

今後のさらなる研究に期待

今回の発見はあらゆる感染症や季節性に関連する疾患の原因解明や治療法解明に大きな意味をもつものと考えられます。季節の変わり目に体調を崩しやすいとお悩みの皆さん、今後そのような悩みが解決できる画期的な策が導き出されるのも、そう遠くはないかもしれません。そして、原因不明の季節病で悩むことが無くなりそうです。今後の研究に期待したいですね。