がん患者さんの3人に1人は、働く世代。

 日本人男性の2人に1人、日本人女性の3人に1人が、一生のどこかで、がんと診断される時代です。そして、がん患者さんの3分の1(年間20万人以上)は、20代から60歳ぐらいまでの働く世代です。
 前回の健康コラムでも述べましたが、女性は20代~40代、男性は50歳以上になったら、がんの早期発見、早期治療などに努めた方がよいでしょう。
 
 今日は、「がん患者さんが復職するためにすべきこととは」について、少しばかり、お話したいと思います。

画像: がん患者さんの3人に1人は、働く世代。

ある日突然、がんと診断されたら・・・

 前回のコラムでも述べましたが、今まで、一度も健康診断で異常を指摘されたことがない人でも、
がんは、ある日、突然診断されることが圧倒的に多いのが特徴的です(長年、タバコを吸っていて、がんになってしまった・・・というエピソードは多いですが・・・)。

 ある日、がんと診断されたら・・・さまざまな不安、葛藤に悩まされ、平常心を持つことは難しいと思われます。

画像: ある日突然、がんと診断されたら・・・

復職するための4つの要素 「働きたい気持ち」「働く力」「職場のサポート」

 会社を休んで、手術・抗がん剤などの医学的な治療の後、「人として生活できるレベルにある状態」=「復職できる状態」では決してありません。

画像1: 復職するための4つの要素 「働きたい気持ち」「働く力」「職場のサポート」

 復職するためには、
この「人として生活できるレベル」である1段目から、
「働くことができるレベル」である2段目までレベルアップしていく必要性があります。
それには、
①復職の意欲  「復職したい気持ちが十分にあること」
②気力・体力  「元気に働いていた時の気力・体力を100とすると、今現在、70以上あること」
③職場のサポート「現在の心と体の状態を受け入れてくれる職場があること(職場の復職支援等)」
                                      が必要です。

画像2: 復職するための4つの要素 「働きたい気持ち」「働く力」「職場のサポート」

がん患者さんの体力回復には時間がかかります。
がん患者さんの復職は想像以上に大変困難なこと。

 職場は、病院やリハビリ施設ではありません。
「毎日、決まった時間に起床し、決まった時間までに出社しなければならない。」
「上司などから与えられた仕事を、それなりに、こなさなければならない。」
「職場では協調性をもって、組織の一員として努める」など、
がん治療後、退院できたら、直ぐに復職できるわけではありません。

 職場には、「利害関係の絡む空気」があります。
 復職後の治療(抗がん剤の治療)、再発への不安などからくる睡眠障害やメンタルへルス不調など、上の図の1段目の「生きる」部分が「ぐらぐら」揺らぎやすい状況であるのに、2段目の「働く」部分を維持しながら、働いていく…
 
 がん患者の皆さんが職場復帰した後に、治療と両立しながら、働き続けていくことは、想像以上に大変困難なこと。長年、がん患者さんの復職支援をしている立場で、痛感しております。

画像: がん患者さんの体力回復には時間がかかります。 がん患者さんの復職は想像以上に大変困難なこと。

がん患者さんが復職を考えたときにすべきこととは?

①がん治療で、仕事を休まなければならないことが分かったら・・・

 いつまで休めるのか(身分保障期間)、いつまでお給料が出るのか(所得補償期間)、傷病手当金制度などを、職場の総務等で必ず確認した方がよいでしょう。
 病名、現在の治療方針、入院期間など、主治医の先生から聞いている内容を職場に伝え、出来る限りスムーズな仕事の引継ぎを行うことが必要でしょう。
 
 がんの治療などで、療養が必要な状況になった時には、主治医の先生に「療養が必要である」旨の診断書を書いてもらい、職場に提出することが一般的だと思われます。
 

②主治医の先生と面談する際には・・・ 

 主治医の先生に、今後の治療方針(抗がん剤治療など)、仕事に戻れそうな時期、再発の可能性などを説明してもらい、それをメモして、記録として残しておくようにしましょう。

③治療がひと段落したら・・・

職場(総務・人事・直属の上司)に電話などで連絡して、現在の治療計画、自分の病状、いつぐらいに復職できそうか、主治医の意見などをメモしたものを見ながら、職場に伝えるなどがよいかもしれません。
  短時間勤務が許されるのか、仕事内容の変更の希望など、聞ける範囲で職場に尋ねたりしてもよいかもしれません。

④自分自身の体力・気力がどれ程ありそうなのかを確認

 自分の気力・体力が、元気に働いていた時の7割以上はあることを、自分自身で確認することをお勧め致します。
 (主治医の先生に、「直ぐにでも、仕事に戻りたい」と懇願したら、復職可能の診断書を書いてくれるかもしれないが、5割や6割ぐらいの体力・気力では、毎日、週5日職場に通勤し続けることは困難であり、突発休や再休務せざるを得ないケースが多いのです)
   
  先程の図の一段目にあたる「生活できるレベル」が重要です。
 チェックポイントとしては・・・
  ☆よく睡眠がとれているか?
    (寝つきが悪いとか、夜中に目が覚めることなどなく、それなりよく眠れていること。ど
     うしても眠れないのであれば、早めに精神科医の先生にご相談ください)
  ☆それなりに食事がとれているか?(食事量は、体力・気力の回復に影響することでしょう)
  ☆一定の頭脳労働が可能かどうか? (一定時間の読書、記録力、集中力が持続するかどうか)
  ☆一定の体力があるか? (息切れやだるさなどなく、それなりに生活できるかどうか)

 職場復帰できるくらいまで、体力・気力が回復するには長い時間がかかります(どれくらいかかるかのデータについての詳細は、またお話致します)。
 焦らず、慌てず、諦めず。

 体力・気力が本来の7割まで、回復するのを待つ方が良いと思います。

 

⑤復職できそうになったら・・・

 主治医の先生に、「就労可能」や「復職可能」と記載して頂いて、その診断書を職場に提出することが一般的だと思います。
 診断書には、職場が短時間勤務や時差出勤、作業内容の変更等、ある程度配慮してくれそうであれば、主治医の先生の診断書に、「短時間勤務が望ましい」とか、「現時点で就労可能であるが、今後2か月程、外来での化学療法が継続する見込みである」とか、記載されていると、職場は動きやすいと思います。

 診断書は、公文書ですので、職場に提出するものとしては、極めて重要です。
 
 

⑥復職することになったら、復職面談をお勧め致します

  復職後の治療、勤務のことを、復職面談によって、職場とよく相談する方が良いかと思います。特に、配慮してもらいたいことを明確にして、その旨を職場に相談すると良いかと思います。
  産業医がいる職場(50人以上の事業所なら必ず月一回訪問しているはず)ならば、産業医に、復職支援のアドバイスをもらうと良いでしょう。
  産業医は、復職支援の専門家です。

  企業は、産業医とは、産業医契約を結んで、それなりの報酬を与えています。

  産業医がいる職場(50人以上の事業所)であれば、産業医面談をお勧め致します。

⑦気持ちが落ち込んで、夜があまり眠れないようなら・・・

メンタルへルス不調を感じたら、迷わず、精神科医の先生の診察を受ける事をお勧め致します。

⑧復職して、職場に戻ったら・・・

職場の方々のサポートを受けられるよう、日々感謝の気持ちを伝えるようにした方が良いかと思います。

⑨職場に相談しづらい場合は・・・

職場に相談しづらい場合などは、がん相談ホットライン03-3562-7830などのがん相談窓口で相談してみるのも、良いかもしれません。

⑩復職したら・・・毎日職場に通勤できているだけで、十分です。
  今日も、職場に行けた自分をよく褒めてあげてください。
  気負わず、ぼちぼち、職場に慣れていけばいいのですから。

(あまり大きな声では言えませんが・・・)
復職できたら、毎朝、職場に通勤できただけで十分だと思います。
「通勤が、その日一日の95%、仕事をしたようなもの」と(こっそり)考えるようにしましょう。

「休んでいた分、早く一人前に仕事をしないと」とか、「折角復職できたんだから、一生懸命頑張らないと」とか、気負いすぎては、体力・気力が持ちません。体力・気力は、70~80%しかないのですから。
 実際にその病気になった人でない限り、その病気の苦しさを100%理解することはできないと思います。
 まずは、週5日、遅刻せずに職場に行けた自分をよく褒めてあげて、時間だけが解決してくれると思って、毎日の体調管理にベストを尽くすべきだと思います。

 徐々に身体が回復していけば、また元通りに働けますから。

 復職後にメンタルヘルス不調になるがん患者さんも少なくないんですよ。(この復職後の実態調査の結果はまたいつかお伝えできたらと考えてます)

画像: ⑩復職したら・・・毎日職場に通勤できているだけで、十分です。 今日も、職場に行けた自分をよく褒めてあげてください。 気負わず、ぼちぼち、職場に慣れていけばいいのですから。

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