劇症1型糖尿病とは。

糖尿病と聞くと、生活習慣病の中で代表的な疾患とのイメージをお持ちの方も多いはず。糖尿病とは、膵臓という臓器から分泌されるホルモン”インスリン”の作用が十分でないため、ブドウ糖が有効に使われずに、血糖値が高くなっている状態のことです。糖尿病には1型と2型があり、日本の糖尿病患者さんの約95%の方が2型糖尿病とされています。この2型糖尿病は、遺伝的体質に加え、高脂肪食をはじめとする過食や運動不足、肥満やストレスなどの生活習慣の複合により発症するとされています。一方、1型糖尿病は子供に多く見られ、生活習慣とは関係なしに膵臓の細胞が壊れ、インスリン分泌自体が障害され発症するものを指します。
ところが、この1型・2型以外の発症形態をもつ糖尿病の存在が、つい最近2000年に発表されました。それが、”劇症1型糖尿病”です。

感染が原因って本当なのでしょうか。

今のところ、原因についての詳細は不明ですが、感受性を有する人に何らかのウイルス感染を契機として、抗ウィルス免疫が惹起(免疫反応が活発になること)され、膵臓にあるβ細胞が破壊されて発症するのではないかとの仮説が有力です。原因となるウイルスとしては、 以下のようなウイルスが考えられていますが、必ずしも以下のウイルス感染によって劇症1型糖尿病が発症するとは限りません。
・コクサッキーBウイルス・サイトメガロウィルス(CMV)・EBウイルス(EBV)・ムンプス(おたふく風邪)ウイルス・風疹ウイルス・ロタウイルス・ピコルナウイルス・エコーウイルス
この中で、ムンプスウイルスや風疹ウイルス、ロタウイルスなどは一度は聞いたことのあるウイルスではないでしょうか。このような、一般的なウイルス感染によっても、様々な疾患発症に関係する可能性も出てきていますので注意が必要です。

画像: 感染が原因って本当なのでしょうか。

症状は?発症までの経過は?

劇症1型糖尿病に関して、以下、難病情報センターの記載です。症状に関して重要なポイントを確認してみましょう。 

症状

約70%の症例に上気道炎(咽頭痛、発熱など)、消化器症状(上腹部通痛、悪心•嘔吐)などの感染症状があり、急激な血糖上昇のため、口渇、多飲、多尿、全身倦怠感を示す。重症化すると昏意識障害、さらには昏睡に陥る。

合併症

高血糖、ケトアシドーシスによる昏睡を来し、治療が遅れれば、致死的である。急性期から回復後も血糖のコントロール困難であり、糖尿病に伴う、さまざまな合併症(網膜症、腎症、神経障害、動脈硬化症)のリスクが高い。

参考 ”糖尿病ケトアシドーシス”

糖尿病の高血糖性の急性代謝失調であり、極度にインスリンが不足したり、コルチゾル・アドレナリンなどのインスリン拮抗ホルモンが増えると、インスリンの作用が弱まって急に発症します。インスリンが不足すると、血液中のブドウ糖を代謝できなくなり、高血糖状態になります。すると、体はその代わりに脂肪を分解してエネルギーをつくり出します。このときに副産物としてつくり出されるケトン体が血液中に急に増える(高ケトン血症)ことで、血液が酸性になり(ケトアシドーシス)、体に異常が発生するというしくみです。
その多くは1型糖尿病でみられ、近頃は清涼飲料水を多飲する2型糖尿病でもみられ、ペットボトル症候群(清涼飲料水アシドーシス)と呼ばれています。

画像: 症状は?発症までの経過は?

治療はどのようなことを行うのでしょうか。

劇症1型糖尿病で最も恐ろしいことは、”ケトアシドーシス”と呼ばれる急激な高血糖状態が引き起こされることです。そのため、急性期の治療としては、このケトアシドーシスをいかにコントロールし、血糖を正常化させることができるかが重要です。そのため、適切な輸液(点滴)とインスリン投与が必須となります。この他、全身状態については、呼吸、循環器(心臓・脳・腎臓等)の重点的な管理が必要な場合もあります。そのため、急性期にはしっかりとした全身管理が必要となるため、入院加療が基本となります。
その後、急性期を脱して回復期に入ると、インスリン強化療法など、通常の1型糖尿病の治療に準じて、食事療法、運動療法、インスリン治療等を行います。

参考

以下、かなり専門的な内容ではありますが、興味のある方はご覧いただければと思います。医療機関では、疾患の特定・治療開始・経過観察の際に次のような項目を参考にしているのです。

劇症1型糖尿病診断基準(2012)
下記1~3のすべての項目を満たすものを劇症1型糖尿病と診断する。

糖尿病症状発現後1週間前後以内でケトーシスあるいはケトアシドーシスに陥る(初診時尿ケトン体陽性、血中ケトン体上昇のいずれかを認める。)
初診時の(随時)血糖値が288 mg/dl (16.0 mmol/l) 以上であり、かつHbA1c値 (NGSP)<8.7 %*である。
発症時の尿中Cペプチド<10 µg/day、または、空腹時血清Cペプチド<0.3 ng/ml かつ グルカゴン負荷後(または食後2時間)血清Cペプチド<0.5 ng/ml である。
*:劇症1型糖尿病発症前に耐糖能異常が存在した場合は、必ずしもこの数字は該当しない。

<参考所見>

A) 原則としてGAD抗体などの膵島関連自己抗体は陰性である。

B) ケトーシスと診断されるまで原則として1週間以内であるが、1~2週間 の症例も存在する。

C) 約98%の症例で発症時に何らかの血中膵外分泌酵素(アミラーゼ、リパー ゼ、エラスターゼ1など)が上昇している。

D) 約70%の症例で前駆症状として上気道炎症状(発熱、咽頭痛など)、消化器症状(上腹部痛、悪心・嘔吐など)を認める。

E) 妊娠に関連して発症することがある。

F) HLA DRB1*04:05-DQB1*04:01との関連が明らかにされている。

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